「社会」を読み解く 101 日本の自衛隊は軍隊ではない? 2019.09.10 22:00

 だいぶ前の話になるのですが、「憲法9条にノーベル賞を…」という運動がありました。
 それぐらい「9条は特別なものだ」「世界中で戦争をしない憲法、軍隊を持たない憲法は日本にしかない」と言いたいのでしょう。
 でもこれはおかしな話です。

 

 まず日本には自衛隊があります。
 自衛隊には最新鋭のステルス戦闘機もあれば戦車もあります。「自衛隊は軍隊ではない」「あれは実力組織なのだ」と、どれだけ力説しても、納得する外国人は誰もいないでしょう。
 ですから9条は世界の中でも特別なものなのだと言われても困るわけです。

 日本の中では、自衛隊は軍隊ではないということになっています。ですから陸軍、海軍、空軍という言葉は使いません。それぞれ陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊といいます。

 でも昨年末のレーダー照射の事件の時には、海上自衛隊が「Japan Navy」と言っていました。
 「This is Japan Navy.」「こちらは日本海軍です」と言っているのです。

 

 本当は、「こちらは海上自衛隊です」。つまり「This is Japan Maritime Self-Defense Force」と言わないといけないところです。
 でもこれを直訳すると、「こちらは日本の海上における自衛の力です」となります。そんなややこしくて長い言葉を緊急事態に言われても困ります。それで「Japan Navy」と言ったのです。

 それから自衛隊では、戦車ではなくて「特車」といいます。
 「あれは戦車じゃない。確かに大砲で攻撃ができて、車体が頑丈にできている。世界中の戦車の中でもトップレベルの性能を持っている。でもあれば戦車じゃない。特別な車で、日本では特車と呼んでいるのだ」というのです。

 

 でも実際は、どこからどう見ても戦車です。特車を英語に訳しても戦車です。ですから外国人にしてみれば、自衛隊には陸軍と海軍と空軍があって、戦闘機も戦車もある。それが軍隊じゃないなんておかしいじゃないか。「軍隊を持たない9条にノーベル平和賞を」と言われても何のことかさっぱり分からない。一体何が言いたいのだ。「Why Japanese people ?」ということになるでしょう。

 自衛隊の話でだいぶ引っ張ってしまいましたが、話を元に戻すと、日本の憲法が世界で最も独特であるのは9条があることではありません。
 それは、前回説明したように、日本国憲法の第1章の題名が「天皇」であって、1条から8条までずっと天皇について定めているということです。

 

 皆さんはおそらく、学校で天皇について習った時に、戦前の悪い制度とは違うのだ、ということを強調されたのではないでしょうか。
 戦前の天皇は支配者のような悪い存在だった。天皇が原因で戦争も起きた。国民が虐げられた。しかし今の天皇は政治的な権力を持たない。国民主権になった…。
 こうやって、天皇制をかなり批判した上で、日本国憲法天皇に何の権力も持たせないことにした。それが「象徴天皇制」なのだ、というようなイメージです。

 実はこのイメージは、本来の天皇制とはだいぶ違うイメージです。象徴という意味も間違えています。
 でもたくさんの先生たちがそう教えています。私の先生もそうでした。おそらく学校の先生たちも、天皇とは何なのか、象徴とは何を意味するのかということの本質を、あまり知らないで教えているのではないかと思います。
 あるいは共産主義の思想をもった教師が、確信犯的にそう教えているのかもしれません。

 

 どちらかは分かりませんが、仮に皆さんもそういうイメージで象徴天皇制を捉えていたのであれば、ぜひこの機会に本当の意味を知ってもらいたいと思います。